【正解】
香川県の象頭山(琴平山)に鎮座する当宮の名称を「金毘羅宮(こんぴらぐう)」と表記してはいけません。
香川県の象頭山(琴平山)に鎮座する当宮の現在の名称として正しいのは、正式名称「金刀比羅宮(ことひらぐう)」と、愛称「こんぴらさん」のみです。
テレビ、新聞、雑誌などで、当宮の現在の名称が「金毘羅宮(こんぴらぐう)」と表記されることがありますが、間違いです。
個人や企業・学校などのホームページや SNS の文章でも当宮の現在の名称を「金比羅神社」「金比羅宮」「琴平宮」などと記す間違いがよくあります。
間違いが多発するのはなぜなのでしょうか?
前述のとおり、当宮の現在の名称として正しいのは、正式名称「金刀比羅宮(ことひらぐう)」と、愛称「こんぴらさん」のみです。
〝当宮〟〝現在〟と記したのには理由があります。
金刀比羅宮の長い歴史と、〝こんぴら信仰〟の全国への広がりにより、象頭山(琴平山)に鎮座する金刀比羅大神様は時代と地域によって様々な呼ばれ方をされるからなのです。
明治時代になるまで、本地垂迹(ほんじすいじゃく)説に基づく神仏習合により、象頭山の神さまは、薬師十二神将(やくしじゅうにじんしょう)である金毘羅(こんぴら)の仮の姿(=権現)、つまり「金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)」である、とされていました。
その信仰が諸国の大名から庶民にまで広まると、人々は金毘羅大権現様を、親しみをこめて敬称の「様」を「さん」とし、「こんぴらさん」と呼ぶようになりました。
明治時代になると、明治政府による神仏判然令、いわゆる神仏分離を受け、金毘羅大権現は現在の「金刀比羅宮」となりました。
同時に、愛称「こんぴらさん」も現在まで用いられ続けています。
明治時代の一時期だけですが、「琴平神社」「事比羅宮」という名称も用いられたことがあります。
「金毘羅」の〝毘〟を〝比〟に変えて「金比羅」と記すようにもなりました。
さて、「金毘羅大権現」「金刀比羅宮」「琴平神社」「事比羅宮」「金比羅」などの名称がでてきました。
それらは、社寺の名を表す部分と、社寺の分類を表す部分、の2つに分けられます。
つまり、名を表す部分は次の5種類。
分類を表す部分は次の3種類。
すると、この名と分類の組合せで、5×3=15種類の名称を作ることができます。
- 金刀比羅大権現
- 金刀比羅宮
- 金刀比羅神社
- 琴平大権現
- 琴平宮
- 琴平神社
- 事比羅大権現
- 事比羅宮
- 事比羅神社
- 金比羅大権現
- 金比羅宮
- 金比羅神社
- 金毘羅大権現
- 金毘羅宮
- 金毘羅神社
なんと、「事比羅大権現」以外は全て、全国に数多くある〝こんぴら信仰〟の社寺の過去または現在の名称なのです。
〝こんぴら信仰〟の長い歴史と全国への広がりにより、このように多様な名称の社寺が存在するのです。
その多様さのため、各種メディアでの名称の誤記が多発するのだと思われます。
全国の〝こんぴら信仰〟の社寺の名称はそれぞれ独自で様々であり、また、当宮の名称は明治時代に変わりましたが、香川県の象頭山(琴平山)に鎮座する当宮の現在の名称として正しいのは、正式名称「金刀比羅宮(ことひらぐう)」と、愛称「こんぴらさん」のみなのです。